ボイストレーニングと歌の練習
ピアノ、ギター、ベース、ヴァイオリン、多くの楽器は購入後、差こそはあれど指定されている音は鳴るようにできており”良品”です。
楽器の稽古、レッスン、練習はこの”良品”を使う事が前提となっていますよね。
ピアノのド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シの音だけこもっているなんて事はないし、ヴァイオリンの弦がだるんだるんで調弦できないという事もないし、ギターのチューニングしようとして、ペグが動かないという事もないし、ペダル踏んでも音が伸びないとかはないはずです。
使いすぎて故障、そして機能しなくなる事はありますが、購入した直後はそんな事はありえないはずですよね。
ただ、人間の喉、声をだす”楽器”は少し違います。
楽器”として成立されてない状態、正しくはそのような状態に成り下がってしまった場合がほとんど。
高い音がでない、低い音がでない、響かない、ビブラートができない、裏声がでない、欠陥品という言葉はあまり使いたくはないですが表現としては間違ってはいないでしょう。
生まれたばかりの頃はどうだろうか、”楽器”は欠陥品だったのだろうか。いやそうではない。信じられないくらい大きな声、高い声、ノイズ成分、いろんな種類の音質をだしていたのではなかろうか。
とすると、我々は赤ちゃんの状態から大人になる過程の中で、体、喉に抑圧をかけていき、生まれた時の喉、”楽器”と比べると、欠陥という形になってしまったと考えることもできるのではないか。
ピアノ、ギター、ペース、ヴァイオリンを思い浮かべて欲しい、これらの楽器が物置きの奥の方に追いやられ、他の物に押し潰されているような状態で何年も放置していたらどうなるだろうか、言うまでもなくみるみるうちに良品の状態から欠陥のほうに成り下がっていくでしょう。
喉でいうならば、大きくいうところの”現代社会”というものが、抑圧物質として働いているのは確かであるといえます。
ボイストレーニングで大事な事は
- 1)抑圧がどんなものか知ること
- 2)抑圧を取り除いていく
- 3)欠陥部分を知ること
- 4)欠陥部分を補正していくこと
しっかりと認識、実践しながら、歌の練習(ボーカルトレーニング)に励む事が大切なのではないかと思うのです。
これを認知しないまま、実践しないままで、喉が初めから”良品”であると誤認知したままで、歌の練習(ボーカルトレーニング)をしても、なかなか思ったようにいきません。
もちろん、初めから良品のような天才もいらっしゃいます。超良品みたいな方も。自然歌手とも呼ばれる存在。ただ、この現代の世界にはあまりいらっしゃらないのではいかと思うのです。
ボイストレーニングをして良品になってから、歌の練習をして欲しいというわけではありません。なるまでに個人差はありますし、時間かかりすぎて歌の練習にありつけない可能性もでてきます。
ボイストレーニングと歌の練習は別物であると認識したうえで、両輪の尺度をもっていただきたいというお話しでございます。