バランスを崩して代替へ〜舌骨下筋群と舌骨上筋群〜

未だに日本では、喉を上げて声を出すことがご法度という認識の方が多いように見受けられます。
オペラっぽい声でー!というと喜んでやるのに、昭和初期の歌手達、昔の芸人さんの声でー!というと抵抗があるみたいですね。

もともと昔の日本人の声のタイプは喉が高めで、ノイズ的な要素も入っていたくらいです。
ただ、敗戦した後に、外の文化が入ってきて、喉を上げた声は汚いしキンキンするという理由で、喉を下げて声を出さないといけないという風潮にされてしまいました。徐々に声の道徳感というものが変わっていくわけですね。

次第に、日本全体の音楽教育に浸透していき、喉が高め=良くない発声喉に悪影響を与える発声とまで位置付けされてしまってるわけです。
本来は、喉を上げることも、下げることも、喉の機能という面では必要不可欠で、むしろ偏った喉の使い方が一番喉に悪影響を与えるということです。

喉を上げるも、下げるもバランスということです。

もう少し掘り下げてみていきましょう。

喉を下げる筋肉

胸骨甲状筋ー胸骨からみて甲状軟骨を下へ引っ張る筋肉
胸骨舌骨筋ー胸骨からみて舌骨を下へ引っ張る筋肉
肩甲舌骨筋ー肩甲骨からみて舌骨を下へ引っ張る筋肉

ばかり動かしてしまうと(筋肉は縮むことが仕事)

喉を上げる筋肉

甲状舌骨筋ー甲状軟骨を舌骨側へ上げる筋肉(舌骨固定時)
伸びっきった状態、いわゆるあまり使われていない状態になってしまいます。
ちなみに、胸骨舌骨筋甲状舌骨筋の筋束は一部繋がっています。

どうでしょう。
しゃがんだ状態でずっと生活していたらいざ立つ時、立つ筋肉は衰えていて、上手くたてないのではないでしょうか。
でも立たなきゃいけないわけです。ですが、立つ筋肉は衰えているわけですね。

どうすると思いますか?

代替ですね。
いわゆる本来働くべきところが働いてくれないわけですから本来とは違う筋肉群を使うことになるのです。

喉の話しに戻りましょう。
先程の喉を下げる筋肉(胸骨甲状筋、胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋)ばかり使っていると、喉を上げる筋肉(甲状舌骨筋)が伸びきった状態になり、弱くなるということでしたね。逆も然り。

舌骨下筋群のバランスが悪くなってくると、下筋群と比べて発声に関与が薄い舌骨上筋群、または発声にほとんど関与しないと言われている筋肉群(胸鎖乳突筋、皮筋等)へ代替することになります。


舌骨上筋群としては、本来の仕事以上だったり、専門外だったりするので、良いパフォーマンスができずに様々な弊害がでてくることが多いです。

例えば

舌に力が過剰にはいる
顎に力が過剰にはいる
唇に力が過剰にはいる
首に過剰に血管が浮き出ている等

ただ、稀に、最初からその代替が上手くいっていて、見事な喉を手にする人もいらっしゃいます。
稀にですけど、いらっしゃいます。とても感激しますが、ただ、ほとんどはそうはなりません。

腹式呼吸だけで歌が上手くなることはほとんどありませんが、稀に、代替が上手くいって見事な歌声を手にするみたいな話しに似ていますね。

ほとんどの初学者はボイストレーニングを始める時、代替という方向にいくと良い方向にはいきません。
こうならないためにも、まずは舌骨下筋群喉を上げる筋肉喉を下げる筋肉を同じくらい使ってあげて下さい。

舌骨下筋群のバランスが良くなってきたら、代替をすることは少なくなり、舌骨上筋群は本来の仕事をし始めてくれます。
いわゆる、喉のエラーを出さないできちんと仕事してくれるということです。

舌骨上筋群を使うことが悪いわけではないですからね。後々、ここも適切に使っていかないといけないわけですから。

舌骨下筋群の使い方が偏ってしまうと、下筋群と比べて発声に関与が薄い舌骨上筋群、発声にほとんど関与しないと言われている筋肉群(胸鎖乳突筋、皮筋等)が代替筋として作動してしまい、喉に何らかのエラーを引き起こしてしまう人が多いというお話しです。

舌骨下筋群舌骨上筋群

喉に近いところから喉から遠いところ

が適切なのかと思います。

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